君のために創った詩

                湯山英之

 

 

春の風

流れ乱れる君の髪

心も躍る黄色のリュック

 

 

 

爽やかな

風と少女が降り注ぐ

授業前の救いの雨かな

 

 

 

海近き

芝生の上で君が持つ

シロツメ草の小さな冠

 

 

 

クラクラと

君に心を奪われて

ピンクの唇思い出づるか

 

 

 

恋という言葉を知る哉

十六の春

恋とは空をより高々に

 

 

 

意気地なし!

一度も話すことも無く

二度目の春がまた過ぎ行くか

 

 

 

大久保とキャプテン通して初対面

言葉が出ずに

ああ子供かな

 

 

 

友人に担がれ裏庭初打席

高鳴る鼓動

深く深呼吸

 

 

 

愛の告白!

人気の無い裏庭で

柵より高く球が飛ぶかな

 

 

 

君だけを

思い続ける僕がいて

君は初めて愛を知りゆく

 

 

 

照れ笑い

靴箱から取り出した

野球以外の青春かな

 

 

 

辛かった部活の後に嬉かな

現に夢見た

君との帰り道

 

 

 

笑えばと君は言うけれど

笑えない

プリクラ前で君が近くに

 

 

 

弟を騙すと二人結託し

君が家近く

サークルKで

 

 

 

携帯が鳴るのを待つの

遠くても

あなたの声が聞こえるように

 

 

 

揺れ動く君の心を

紫陽花の

色に譬(たと)えて雨に濡れ

 

 

 

嫌な予感

君がどこかへ行きそうで

不安定な空を見つめる

 

 

 

さりげなく

君に伝えしこの恋は

君が見胸に伝わりうるか

 

 

 

君の告白!

人気の無い教室で

雨に打たれて煙草がまずい

 

 

 

月光の下

物思いに夜が深ける

空を見上げる煙が香る

 

 

 

会いたいよ

君のいない徒然にしたためた手紙

引き出しの中に

 

 

 

月を背に君に逢わんと

萩の宿

心迷いてやがて雨に濡れ

 

 

 

君は見る

私を超えて何処なのか

振り向く君を待ち続けるか

 

 

 

夢の中君がもっと欲しくなり

そこに君は居ず!

寒い冬の朝

 

 

 

若き日の青春の影

ひっそりと

佇んでいる待宵草

 

 

 

故郷の

憧れの地を通り過ぎ

思わず涙溢れてきゆる

 

 

 

逢いたくて

君に少しも逢えなくて

あなたは遠く北の彼方

 

 

 

掌で融けゆく淡雪

椿咲き

君のために創った詩

 

 

 

忘れない

君に逢えたその日々と

あの日出逢った一人の乙女

 

 

 

友に聞く又も悲しき物語

君の恋か

はまゆりの花

 

 

 

草若葉

恋の予感が又香る

思い返せば又春だった

 

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