霧中の二人

             湯山英之

 

 

夢うつつ

港の見える街角に君を探して

その面影を

 

 

ようやく

僕は旅に出ました

 

君に会うために

随分と長い間

汽車に揺られ

船に揺られて

君のふるさとに着きました

 

君がいつも自慢していた

海を見ました

この海こそが君の出発点なのですね

 

この荒々しい海を見ながら

自然の険しさと

大いなる大地に育まれ

清清しく

凛とした

そんなにも素晴らしい女性になれた事を

僕は知っています

 

 

夢うつつ

港の見える街角に君を探して

その面影を

 

 

一歩一歩

幼い君の足跡を追いかけて

君が駆けていた野山も

君が遊んでいた小川も

精一杯踏みしめて

君に会いに行きます

 

 

夢うつつ

港の見える街角に君を探して

その面影を

 

 

一年振りに君と逢いますね

 

茶の間にはいつも僕独り

君が好きだった散歩も僕独り

テーブルには書きかけの手紙もそのままに

 

家の中はテレビの無くなったかのような静けさです

 

君がいないことで

こんなにも苦しみ

静寂がこんなにも辛いものだとは

気付きませんでした

抱きしめても

抱きしめても

冷えていく君を

暖められずにいた僕は

自暴自棄になったけれど

君の故郷の潮風が

優しく僕の肩を撫でてくれます

 

約束通りに僕は

愛する君に会いに行きます

 

さあ、

もう一度二人で

夏の日の思い出を作りましょう

 

 

函館の宇賀浦からのさざ波と

ハマツメクサと

淡き思い出を

 

 

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