旅立ちの夜

             湯山英之

 

家路へ急ぐ人並みを

かき分けながらただ独り

発車のベルの鳴り止んだ上野行に飛び乗った

 

流れる窓に映りこむ

私の頬に伝う涙

やがて涙の足跡が懐かしいと思えるわ

だって貴方は追いかけて来やしないから

 

 

汗ばんだ携帯電話を握りしめ

過去の私に別れを告げて

青森駅は今日も白い雪の中

私の隣に貴方はもういないのね

 

 

 

 

もう待つことに疲れたわ

だけど来ることを祈っている

そんなバカな私にも嫌気がさしてきたみたい

 

くもりガラスに指で書く

貴方の名前かき消しても

貴方の事が心から離れないダメな私

いつか貴方の思い出は消せるのかしら

 

 

汗ばんだ携帯電話を握りしめ

過去の私に別れを告げて

青森駅は今日も白い雪の中

私の隣に貴方はもういないのね

 

 

くしゃくしゃの寝台券を握りしめ

明日の私にエールを送り

青森駅は今日も白い雪の中

私の隣に貴方はもういないのね

 

 

inserted by FC2 system